Live2D
2D 静止イラストを「変形だけで」動かす日本発の技術。Live2D Inc. が開発、現行版は Cubism 4。3D モデリングを介さずに 2D の絵をそのまま立体的に動かせるのが核。
何を解決した技術か
VTuber や 2D ゲームでキャラを動かすときの選択肢は元々2つしかなかった:
- 3D モデリング — Blender / Maya で立体を作る。立体感は出るが、絵師の描いた線・塗り・タッチが失われる
- コマアニメ — 何枚も描く。労力が膨大で表情の自由度が低い
Live2D は3つ目の道。1枚のイラストを PSD レイヤに分けて、各レイヤを「メッシュ変形」で動かす。絵師の線そのままで、表情・首振り・呼吸・髪揺れまで作れる。
仕組み
flowchart LR
PSD["PSD<br/>(レイヤ分け済の絵)"] --> Editor["Cubism Editor<br/>パラメータを定義"]
Editor --> Moc[".moc3<br/>(コンパイル済バイナリ)"]
Editor --> Manifest[".model3.json<br/>(マニフェスト)"]
Editor --> Physics[".physics3.json<br/>(物理演算定義)"]
Manifest --> Runtime["Cubism SDK<br/>(Unity / Web / Native)"]
Moc --> Runtime
Physics --> Runtime
Runtime --> Param["パラメータ入力<br/>例: 顔向き=0.7, 口開け=0.3"]
Param --> Output["変形後の 2D 描画"]
中核は パラメータ → 変形 の写像。ParamAngleX(顔の左右)、ParamMouthOpenY(口の開き)等の標準パラメータがあり、ランタイムにこの数値を投げると絵が変形する。フェイストラッキングは「カメラ → 表情パラメータ」の変換器に過ぎない。
ファイル一式(Cubism 3+)
| 拡張子 | 中身 |
|---|---|
.moc3 | コンパイル済モデル(メッシュ + パラメータ + デフォーマ)。バイナリ |
.model3.json | マニフェスト(テクスチャ参照、物理ファイル参照、パラメータグループ) |
.physics3.json | 髪・服・揺れもの物理演算の定義 |
.cdi3.json | パラメータの表示用メタデータ(任意) |
.motion3.json | アニメーションクリップ |
.exp3.json | 表情プリセット(複数パラメータの組) |
| テクスチャ画像 | png(4096×4096 が一般的) |
VTuber エコシステムとの関係
- VTube Studio / VSeeFace / PrPrLive — エンドユーザ用の VTuber アプリ。中で Cubism SDK を回している
- iPhone TrueDepth / カメラのみ — 顔のランドマーク → 標準パラメータに変換するのが各アプリの仕事
- VRM — 別規格。VRM は 3D(glTF 拡張)。Live2D は 2D。同居は可能(アバター切替)
animula のような「AI VTuber」を作る場合、音声合成 → 表情パラメータ生成 → Cubism SDK へ送信 が中核ループ。Live2D 自体は「絵を動かす部分」だけで、AI 部分は外側。
ライセンスと商用利用の注意点
- Cubism Editor: FREE 版(個人〜小規模)と PRO 版(商用本格)の二段階
- Cubism SDK: 売上規模により段階的にロイヤリティ/契約が発生。年商 1,000 万円までは無償で SDK 利用可、超えると年間ライセンス契約が必要(2024 時点。最新は公式参照)
- VTuber 配信単体は通常 SDK ライセンス対象外(クライアントアプリ側がカバーしているため)
競合・代替
| 技術 | 形式 | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|
| Live2D | 2D メッシュ変形 | 絵師の線そのまま | 真横〜真後ろは描けない |
| Spine | 2D ボーン+メッシュ | ゲーム最適化、軽量 | 日本市場の素材が薄い |
| VRM | 3D (glTF 拡張) | どの角度でも描画 | モデリング工程が重い |
| PSDtuber 系 | レイヤ切替 | 究極に簡単 | 表情自由度ほぼゼロ |
押さえどころ(カード化候補)
- Live2D は何を変形するか → PSD のレイヤ単位でメッシュを切って変形させる
- 出力ファイル
.moc3の意味 → Cubism Editor がコンパイルした、ランタイムが読むモデルバイナリ - パラメータの代表例 →
ParamAngleX(顔向き)、ParamMouthOpenY(口開け)、ParamEyeBallX(黒目) - VTuber アプリと SDK の関係 → VTuber アプリは Cubism SDK の上で動く。SDK は変形だけ、トラッキングはアプリ側
- Live2D vs VRM → Live2D は 2D(絵そのまま、横は描けない)/ VRM は 3D(どの角度でも描ける、モデリング必要)
- Cubism Editor の FREE / PRO の境目 → 個人や小規模は FREE、本格商用は PRO
Links
- Live2D 公式
- Cubism SDK
- VTube Studio — Cubism SDK 上の代表的 VTuber アプリ